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初夏の候って、何月?いつからいつまで使うのが正解?読み方や例文も。

「初夏の候、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます」とか、
「今日はまるで初夏のような陽気」というように使われる「初夏」という言葉があります。

4月終わりからゴールデン・ウィークの頃には、もう夏ではないかと感じるような暑い日があります。

この言葉は文字通り夏の始まりを意味しますが、具体的にはいつからいつまで使えるのでしょうか?
実際の夏の始まりの7月にも使えるのでしょうか?

この記事では、「初夏の候」の読み方や意味、「初夏の候」を使う期間や手紙に使う際のマナーや例文を紹介します。

「初夏の候」の読み方は?

「初夏の候」という表現は、日本の伝統的な手紙や挨拶文で用いられる時候の挨拶の一つです。
この表現の正しい読み方は「しょかのこう」です。

「しょか」は「初夏」、「のこう」は「の候」と読み、直訳すると「初夏の季節」や「初夏の時節」という意味になります。

「候」は「季節がやってきた」という意味を持ちます。
「候」は「そうろう」と誤って読む人が多いですが、意味が異なるので注意しましょう。

この表現は、手紙の冒頭やメールの挨拶、季節の移り変わりを伝えるビジネス文書など、さまざまな場面で使用されます。

日本には季節を大切にする文化が根付いており、「初夏の候」を使うことで、受け取る人に対して敬意を表し、その時期特有の風情や心情を伝えることができます。

「しょかのこう」という言葉だけで、初夏の暖かく心地よい気候や自然の美しさを思い浮かべることができるため、非常に詩的で情緒豊かな表現と言えるでしょう。

「初夏の候」の時期はいつからいつまで?

「初夏の候」の時期はいつからいつまででしょうか?
現代の暦では、初夏(しょか)は5月初旬から6月初旬を意味します。
5月初旬から6月初旬までが「初夏の候」にぴったりの時期です。

6月中旬になると本格的な夏の暑さが増してくるため、初夏という表現に違和感を感じる方もいるかもしれません。

「初夏の候」を6月中旬や下旬に使うのは可能?

気象庁では、6月・7月・8月を『夏』と定めています。

気象庁の夏の定義で6月を初夏とみなす場合、6月中旬や下旬に「初夏の候」を使っても良いものなのでしょうか?
「初夏」という言葉自体が「5月初旬~6月初旬」を指す言葉ですので、6月中旬や下旬に「初夏の候」を使用すると違和感を感じます。

必ずしも使えないわけではありませんが、季節感を考えた挨拶は重要です。
6月中旬・下旬に適した挨拶は他にもたくさんあります。
時期に合った言葉選びを心がけましょう。

7月は初夏ではない?

7月には使用しないことがポイントです。

5月の穏やかな暖かさや、6月の蒸し暑さに夏の訪れを感じます。
梅雨明けの時期である7月は本格的な暑さが始まり、「盛夏(せいか)」もしくは「晩夏(ばんか)」にあたります。

「初夏の候」は6月初旬までが適切な期間なんですね。

かつての旧暦では

かつての旧暦では、季節は三か月ごとに区分されます。
1月から3月を春、4月から6月を夏、7月から9月を秋、そして10月から12月を冬としていました。

その旧暦の4月は現代の暦では5月の初旬から6月の初旬に相当します。
つまり、「初夏の候」「初夏の陽気」という言葉は、5月の初旬から6月の初旬に使われる言葉であると言えます。

さらに細かく分けると、一年は二十四節気と呼ばれる24の季節に分けることができます。
24を4つの季節で割ると6になります。
つまり、春夏秋冬という各季節には、それぞれ6つの季節が含まれるのです。
夏に含まれる6つの季節は以下の通りです。

立夏(りっか)
小満(しょうまん)
芒種(ぼうしゅ)
夏至(げし)
小暑(しょうしょ)
大暑(たいしょ)

夏は「初夏(しょか)」「仲夏(ちゅうか)」「晩夏(ばんか)」と3区分されることができますが、二十四節気では、「立夏」から「立秋」の前日までが『夏』とされています。

3つの夏それぞれには二十四節気の2つずつの季節が対応します。
具体的には、
「初夏」とは、暦の上では二十四節気の『立夏(5月5日頃)~芒種(6月6日頃)の前日まで』を指します。

「盛夏」…『芒種(6月6日頃)~小暑(7月7日頃)の前日まで』
「晩夏」…『小暑(7月7日頃)~立秋(8月7日頃)の前日まで』

毎年変わる立夏の時期

二十四節気は年によって日付が前後することがあります。

立夏の日付は年ごとに異なりますが、2024年の立夏は5月5日です。
そして2024年の芒種は6月5日です。
したがって、2024年の初夏は5月5日から6月4日までとなります。

季語として「初夏の候」を用いる場合

季語として「初夏の候」を用いる場合は、『5月上旬~6月初旬頃』が適切な時期とされます。

初夏の候に関連する季語にはどのようなものがあるでしょうか?

初夏・立夏・夏めく・迎え梅雨・こどもの日・柏餅・こいのぼり・母の日・初鰹・沿道・いちご・筍飯・豆飯・新茶
などの5月から6月に関連する季語が多く使われます。

現在ではやや早い印象

ただし、「初夏の候」を5月上旬や中旬頃に使用すると、現在ではやや早い印象を与える可能性があるため、一般的には5月下旬~6月上旬頃に使われることが多い挨拶の言葉とされています。

「初夏の候」の意味

初夏の候は、手紙や挨拶文の冒頭に書く季節の挨拶の一つであり、「夏の訪れを感じる季節になりましたね」「夏の足音を感じる季節になりましたね」「初夏の季節がやってきました」「初夏の季節を迎えました」という意味があります。

5月初旬あたりから気温の高い日が増え、夏本番を感じさせる日も増えてきます。
この短い期間の爽やかさを象徴する美しい言葉ですね。

「初夏の候」の使い方例文

では、"初夏の候" を「時候の挨拶」と「結びの挨拶」に使う例文を紹介します。

「初夏の候」は「初夏の折(おり)」「初夏のみぎり」「初夏の季節」と同じ意味を持ちますので、どの表現を使っても問題ありません。

ビジネス
【書き出し】
・拝啓、初夏の候、貴社におかれましてはますますのご発展お慶び申し上げます。
・拝啓、初夏の候、貴社いっそうのご清栄のことと拝察いたします。
・拝啓 初夏の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
・拝啓、初夏の候、貴社におかれましてはいっそうご繁盛のこと大慶に存じます。
【結び】
結びの挨拶として使う場合は、書き出しの時候の挨拶とは異なる表現を選ぶように注意してください。
・初夏の候、貴社のますますのご発展とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
・気温も右肩上がりになっていく季節、貴社のますますのご多忙を心よりお祈り申し上げます。
・初夏の折、貴社皆様のご健勝を祈念いたします。
・心地よい風が吹く季節、貴社の一層のご活躍をお祈り申し上げます。
・末筆ながら貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます。
・末筆ながらますますのご活躍をお祈り申し上げます。

目上の方
【書き出し】
・拝啓、初夏の候、〇〇様はいかがおすごしでしょうか。
・拝啓、初夏の候、ご一同様におかれましてもお変わりありませんでしょうか?
・拝啓、初夏の候、〇〇様におかれましてもご健勝のことと存じます。
・初夏の候、お元気でお過ごしでしょうか。
・初夏のみぎり、緑が一層深まり、輝かしい夏の訪れと共に皆様が健やかにお過ごしのことと存じます。
【結び】
・草木も生い茂り爽やかな香りを楽しめる季節となりました。皆様のご活躍を心より老いの意申し上げます。
・衣替えの季節となり夏が近づいていますが、くれぐれも体調にはご留意ください。
・公園の噴水の準備もどんどん進んでまいりましたが、少し肌寒い日もありますのでご自愛ください。
・初夏のみぎり、くれぐれもお身体にはご留意くださいませ。
・初夏の季節、一層のご活躍をお祈り申し上げます。
・初夏の候、お体に気をつけてお過ごしください。

カジュアルな挨拶文
【書き出し】
・若葉が眩しく輝く季節ですね、皆様もお変わりなくお過ごしでしょうか。
・梅雨の足音が聞こえてきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
・夏本番を思わせる強い日差しの日も多くなってまいりましたが、皆様はお変わりありませんでしょうか。
・初夏の季節、次第に夏の暑さを感じる日も出てまいりましたが、お変わりございませんか。
・初夏の候、みなさま仕事に家庭に忙しい毎日をお送りのことと存じます。
【結び】
・もうすぐやってくる梅雨に向けてしっかりと準備をしていきたいところです。くれぐれもご自愛ください。
・季節は春から夏へと着実に進んでいます。季節の変わり目ですのでお体ご自愛ください。
・連休も終わりまた忙しくなりますが、お会いできる日を心より楽しみにしております。
・昼間は夏めいた暑さですが、朝晩はまだ冷え込むことがございます。どうぞご自愛下さいませ。
・さわやかな五月、どうぞお健やかにお過ごしくださいませ。

「初夏の候」以外の時候の挨拶

「初夏の候」以外の時候の挨拶についての説明です。

「青葉の候」

「あおばのこう」と読むこの挨拶は、木々の葉が成長し深い緑色に変わる季節を表します。
5月中旬から本格的な梅雨が訪れる6月中旬までの期間に使用されます。
夏の始まりの爽やかな空気だけでなく、生い茂る緑の葉を思わせる素敵な言葉です。

「新緑の候」

春が終わり、夏が近づくころを表す言葉です。
青々とした葉が茂る5月上旬から初夏の6月上旬までの約1か月間使われます。
詳しくは次の別記事にわかり易くまとめています。

「新緑の候」はいつからいつまで?その意味と正しい使い時・使い方!

手紙の冒頭で使用される「新緑の候」という言葉ですが、読みは「しんりょくのこう」です。この言葉からは、緑に彩られた風景が思い浮かびますね。初夏の爽やかな風を感じる季節には、やはり季節感あふれる言葉で文章 ...

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「薫風の候」

「薫風の候」は5月中旬から下旬に使われる挨拶です。
暖かくなり、青葉が深い緑に変わる爽やかな初夏を表します。
6月に入ると、季節の移り変わりにより使い方に注意が必要です。

5月から6月にかけての時候の挨拶の一覧です。

【時候の挨拶】               【使用時期】
若葉の候(わかばのこう)4月下旬~5月中旬
立夏の候(りっかのこう)立夏(5月5日頃)~小満(5月21日頃)の前日まで
新緑の候(しんりょくのこう)立夏(5月5日頃)~5月下旬
青葉の候(あおばのこう)立夏(5月5日頃)~5月下旬
薫風の候(くんぷうのこう)立夏(5月5日頃)~5月下旬
万緑の候(ばんりょくのこう)立夏(5月5日頃)~芒種(6月6日頃)の前日まで
首夏の候(しゅかのこう)立夏(5月5日頃)~芒種(6月6日頃)の前日まで
軽暑の候(けいしょのこう)5月中旬~5月下旬
薄暑の候(はくしょのこう)5月下旬
麦秋の候(ばくしゅうのこう)5月下旬~6月中旬
向暑の候(こうしょのこう)5月下旬~6月全般
入梅の候(にゅうばいのこう)梅雨入りの時期(6月上旬~中旬頃)
梅雨の候(ばいうのこう・つゆのこう)梅雨の時期全般(6月中旬~6月下旬)
長雨の候(ながあめのこう)梅雨の時期全般(6月中旬~6月下旬)
夏至の候(げしのこう)夏至(6月21日頃)~小暑(7月7日頃)の前日まで
短夜の候(みじかよのこう・たんやのこう)6月中旬
小夏の候(こなつのこう)6月中旬~7月上旬
向夏の候(こうかのこう)6月全般
深緑の候(しんりょくのこう)6月全般

まとめ

「初夏の候」は、夏の始まり、夏の訪れを感じる季節を指し示す言葉です。
「夏の訪れを感じる季節となりましたね」という意味が込められています。
夏の暑さと比べると、初夏はさわやかな印象です。

「初夏の候」は、5月初旬の立夏から6月初旬の芒種の期間に使われる言葉ですが、現在では体感に合わせて5月下旬から6月上旬に使われることが一般的です。梅雨が終わり、7月は夏の盛りである「盛夏」の季節となります。

現代ではビジネス文書でも時候の挨拶がよく使われるので、使用時期や意味を正しく理解して適切に利用していきたいですね。
地域によっては体感気温が異なることもありますので、違和感なく受け取ってもらえるように、天気予報などを参考にして使うことをおすすめします。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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