雑学

「新緑の候」はいつからいつまで?その意味と正しい使い時・使い方!

手紙の冒頭で使用される「新緑の候」という言葉ですが、読みは「しんりょくのこう」です。
この言葉からは、緑に彩られた風景が思い浮かびますね。
初夏の爽やかな風を感じる季節には、やはり季節感あふれる言葉で文章を始めたいですね。
「新緑の候」の期間はいつからいつまでなのでしょうか?
この記事では、「新緑の候」の意味や適切な使用時期について紹介します。
さらに、具体的な例文もいくつかご紹介しますので、手紙を書く際の参考にしてください。

「新緑の候」の読み方と意味

「新緑の候」の読みは、「しんりょくのこう」です。

「候」は「季節」「気候」「自然現象」といった意味があります。
「候」は「そうろう」と読んでしまう方が多いかもしれませんが、正解は「こう」です。
「候」は古文の丁寧語で、「〜でございます」という意味になります。
「しんりょくのこう」の「こう」とは異なるので注意しましょう。

新緑の候は「若葉が茂るころ」「緑が鮮やかな季節」「草木の葉が生え出て、緑の鮮やかな時期になりましたね」という意味があります。
この表現は、「新しい」「緑」という文字通りの意味を持ち、木々が若葉で茂り、その緑が眩しい時期を指します。
言葉だけでも、爽やかな風が吹き抜ける様子が思い浮かびますね。

この挨拶は夏の季語として使われますが、具体的には「初夏」を指し、若い葉が茂り始めたことを表します。
春が過ぎ、木々が花を落とした後、葉が青々と茂る前の時期を指す言葉です。
この時期は、「暑すぎず、寒すぎない夏の始まり」を意味します。
夏らしく清々しく、吹き抜ける風も爽やかで、一年の中で一番気持ちのいい季節ですね。
新緑からは若葉や香り、初夏、風などの多くのイメージが浮かびます。
また、新茶や桜餅、柏餅、笹団子などにも輝く新緑が使われます。

ただ木々の葉が生え出て、緑に覆われるという以上の意味が新緑の候には込められています。
この言葉は、自然のリズムに共感し、四季の変化を大切にする日本人の心情を象徴していると言えるでしょう。
春の訪れと共に、冬の間に蓄えたエネルギーが開放される瞬間であり、新たなスタートを意味する季節です。
この時期は、新しい出会いや始まりを祝う多くの行事が行われ、人々の間には前向きな気持ちが満ち溢れます。

また、「深緑」という類似した言葉もありますが、こちらは「深い緑」で夏のピークでセミが鳴いている時期の葉を指します。
「新緑」は「若い葉」を指す言葉であることを覚えておいてください。

「新緑の候」の期間はいつからいつまででしょうか?

「新緑の候」の期間はいつからいつまででしょうか?季節はいつ?何月ごろ?なのでしょうか?

新緑の候は、春の季節が終わり、夏の季節がすぐそこに近づいている時期を指す言葉です。
5月の上旬から下旬までが適切な使い時です。
青々とした葉が茂る5月上旬から初夏の5月下旬まで、おおよそ1か月ほど使われます。
6月に入ると深緑に近いため、また、梅雨になりますので、梅雨に関連した挨拶がふさわしいですし、新緑の季節も過ぎてしまい、新緑の候という挨拶は5月末までが適切です。

新緑の候の「新緑」は、新緑は季語として5月に該当し、初夏に若葉が生え茂る様子を表す季語です。
旧暦では、夏の始まりとされる「立夏」が5月5日ごろに訪れます。
なお、立夏の前日までは春とされ、立夏から8月初旬の立秋の前日までが暦のうえでは夏になります。
そのため、暦の上では5月6日から6月5日までが初夏となります。
ちなみに、旧暦と新暦(現在の暦)には1ヵ月ほどのズレがあるため、旧暦4月は新暦の5月になります。
旧暦では春が1~3月、夏が4~5月、秋が6~9月、冬が10~12月に相当します。

また、「八十八夜」は立春から数えて88日目にあたる5月2日頃であり、作物の種まきや茶摘みの盛りの時期です。
八十八夜を過ぎると、摘みたての新茶が出回ります。

手紙の挨拶は相手に届く時期に注意

ただし、新緑の候などの季節の挨拶は、手紙やはがきが相手に届くタイミングが重要です。
手紙の挨拶は相手に届く時期に合わせて使うのが一般的です。

「新緑の候」は5月に、具体的には初夏の挨拶として使用されます。
相手が読む時が5月であれば問題ありませんので、手紙が5月頃に届く予定であれば、4月下旬頃から新緑の候という言葉を使うことができます。
4月下旬には桜の花も散ってしまい、若葉も生えてくる時期です。
この時期に新緑の候という言葉を使っても、特におかしくはないでしょう。

また、5月であっても立夏の前日までは春とされるため、その期間に届く手紙やはがきには新緑の候を用いないようにしましょう。
逆に、5月末に手紙を送る場合は、相手が手紙を受け取るのが6月になる可能性があるため、その場合は代わりに、6月の季節に合った長雨の候などの挨拶を使用することをお勧めします。
この場合は使う時期としては適切ではありませんので、ご注意ください。
相手が手紙を受け取る時期を考慮して時節の挨拶を選びましょう。

5月の節気
【立夏(りっか)】
5月6日頃。暦の上では夏の始まりを意味します。天候が安定して爽やかな季節で、大型連休も重なるため、お出かけにぴったりの時期です。
【小満(しょうまん)】
5月21日頃。気候が温暖になり、草木が成長を始める時期です。青々とした草木の緑が目に鮮やかに映えます。

具体的な使用方法

時節の挨拶は手紙の冒頭に適しています。
例えば、「拝啓 新緑の候、いかがお過ごしでしょうか。」
上記の例が一般的な使用方法です。
挨拶の際には、必ず手紙の最後の右端に「敬具」と記載するのが通例です。
また、季節感を表現する文章を加えるとより良いでしょう。

〇新緑の候、日差しも強くなり、暖かい日が増えてきました。皆様はどのようにお過ごしでしょうか?
〇新緑の候、街を歩けば、木々が鮮やかな緑色に変わり始めているのが見て取れます。
〇新緑の候、鯉のぼりが風に乗って元気よく泳いでいるのを見ました。夏の訪れも間近に感じます。
※鯉のぼりは4月末に書く場合にのみ書ける文章ですのでご注意ください。

いくつかのポイントを紹介しましたが、実際にご自身が出勤時や子どものお迎え時などに、少し時間を取って周囲の風景を見てみてください。
そのときに目にする景色を簡単に書き留めてみると、意外と簡単に文章が書けることに気づくかもしれません。
ビジネスメールでなければ、相手もあなたの日常生活に興味を持ってくれるでしょう。
そのため、そうした報告を交えた挨拶の方法がお勧めです。

報告する内容は些細なことでも構いません。
例えば、
・暖かくなってきて、子供たちが外で元気に遊んでいるのをよく見かけます。
・子どもたちが半袖シャツを着ているのが増えました。
・最近、外出先で久しぶりに汗をかくことがありました。
など、どんな内容でもいいと思います。

結びのあいさつの例
・心地よい風が吹くこの季節、どうかお身体を大切になさってください。
・緑が豊かに茂るこの時期、さらなるご繁栄をお祈りいたします。
・新緑の香るこの季節、健やかにお過ごしください。
・暑さが増してまいりますので、どうぞ健康にお気をつけください。
・暑さが厳しくなってまいりますので、お身体を大切にし、ご活躍をお祈りいたします。

「新緑の候」以外の時候の挨拶

5月の時候の挨拶には新緑の候以外にも、さまざまな選択肢があります。
新緑の候は初夏の爽やかさを思わせる言葉ですが、すでに本格的な夏の暑さを感じる地域では使いにくいかもしれません。
そこで、5月にぴったりの時候の挨拶をいくつかご紹介します。

若葉(わかば)の候
「新しい葉が生えはじめた時期」、5月中旬に用います。
盛夏になる前の、生えて間もない葉の時期に使うあいさつです。

立夏(りっか)の候
新しい夏の始まりを祝う立夏。
立夏の候は、通常、5月5日から21日頃までの間に用いられる時候の挨拶です。
毎年5月5日頃から始まり、小満の前日までを含みます。
立夏は二十四節気の一つで、暦の上では夏の始まりを示します。
したがって、天候に左右されずに利用できる時候の挨拶となります。
この期間に手紙を書く際には、この言葉を使うのが良いでしょう。

薫風(くんぷう)の候
初夏に感じる若葉の香り漂う風を表す「薫風の候」は、5月上旬から下旬に使います。
「薫風」とは、新緑の間を吹く初夏特有の風のことを指し、若葉の香りが漂う風を意味します。
気温が上がり、青葉が深い緑に染まる爽やかな初夏を象徴します。
6月に入ると季節が移り変わるため、使用には注意が必要です。
この表現も、「薄暑の候」や「新緑の候」と同様に、手紙やはがきを送る地域の状況に応じて使うのが適切です。

薄暑(はくしょ)の候
初夏にほのかに暑さを感じる季節を表す「薄暑の候」は、5月上旬から6月上旬に使います。
「薄暑」とは初夏になって汗ばむ程度の気温という意味です。
地域によっては、5月上旬はまだ肌寒いこともありますし、逆に本格的な夏の暑さを感じるところもあります。
そのため、手紙やはがきで「薄暑の候」を使う際には、状況に応じて使い分けるのが適切です。

向暑(こうしょ)の候
「季節が夏に向かっている、暑さに向かっている」という意味で、夏の季語です。
春が終わり、だんだんと夏に向かっていく時期に用いることができます。

軽暑(けいしょ)の候
「次第に夏の暑さを感じ始める季節」という意味です。
春の柔らかな日差しから、夏の力強い陽射しに変わり始めたころに使うあいさつです。
木々の葉も濃い緑になり、行楽に最適な季節です。この時期に手紙を出す際には、この言葉を添えると素敵ですね。

万緑(ばんりょく)の候
新緑が青々と茂る万緑
5月上旬から6月上旬にかけて使用される挨拶です。
若葉が成長し、しっかりとした緑色になるこの季節を祝います。

初夏(しょか)の候
暦の上の夏の初めの時候のあいさつです。
初夏の候は、通常、例年5月5日ころの立夏から、例年6月6日ころの芒種の前日までの間に用いられる時候の挨拶です。
これは、薄暑の候や薫風の候と同様の期間ですが、初夏は夏の始まりを意味するため、天候に左右されずに利用できる時候の挨拶と言えます。

新緑の候を利用する際の留意点

新緑の候を手紙やはがきで使用する場合、相手がビジネス関係者や目上の方である場合は慎重さが必要です。
新緑の候などの時候の挨拶は丁寧な表現ですが、文章の冒頭に使用することはマナー違反とされます。
特にビジネス関係者や目上の方への対応では、時候の挨拶の前に必ず敬意を示す言葉を添えましょう。

例えば、「拝啓」や「謹啓」などが一般的ですが、「前略」は避けるべきです。
「前略」は前文を省略するという意味合いがあり、相手に対する尊敬を表現する場合は「拝啓」や「謹啓」がふさわしいでしょう。

そして、敬意を表す言葉を冒頭に置いたら、文章の結びには結語を用いて締めくくります。
「拝啓」には「敬具」または「敬白」、「謹啓」には「謹言」もしくは「謹白」が一般的です。

ただし、親しい友人などに対しては頭語を付ける必要はなく、時候の挨拶から文章を始めても問題ありません。

まとめ

この記事では新緑の候の意味や時期、そして具体的な文例をご紹介しました。
初夏の爽やかな空気を思わせる「新緑の候」は、ぜひ活用したい言葉です。
もし5月に手紙を書く際に、心に緑の豊かな風景が浮かんだら、ぜひこの挨拶を使ってみてください。

新緑の候についてまとめますと、この挨拶は5月上旬から下旬にかけての鮮やかな緑の時期にぴったりです。
読み方は「しんりょくのこう」で、「若葉が生い茂り、自然が生命力に満ち溢れる美しい時期」を意味します。
手紙やはがきを送る際は、相手の受け取る時期を考慮し、立夏前や5月末に注意して使用しましょう。
新緑の候を用いて、季節の変わり目を感じさせる心温まる挨拶を贈ってみてはいかがでしょうか。

季節の変わり目に使われることが多いため、健康を気遣う言葉と組み合わせると、より丁寧な印象を与えるでしょう。
また、受け取る相手の居住地によって季節感が異なる場合があるため、時候の挨拶には同じ時期に使えるものが複数ありますので、迷ってしまうこともあるかもしれませんが、相手の住んでいる地域や状況に合ったものを選ぶようにしてください。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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