日本には、数多くの名城が存在し、それぞれに興味深い歴史や伝説が語り継がれています。
その中でも特に有名なのが「皿屋敷伝説」。
この記事では、姫路城に伝わる「皿屋敷伝説」と、その背後にある歴史について詳しくご紹介します。
姫路城にまつわるこの物語には、お菊という女性の悲劇的な運命と、彼女の霊が夜な夜な井戸から現れて皿を数えるという、恐ろしい怪談が絡んでいます。
あなたも一度は「いちまい、にまい…」という声が響く恐ろしい話を聞いたことがあるかもしれませんね。
有名な「皿屋敷」の怪談は江戸時代だけじゃない!
「皿屋敷」と聞けば、江戸時代に広く知られるようになった「番町皿屋敷」を思い浮かべる方が多いでしょう。
江戸・牛込にある青山播磨守の屋敷で、奉公していたお菊という女性が主人の大切にしていた10枚の皿のうち1枚を割ってしまい、罰せられて井戸に身を投げたというのが、この怪談の基本的な筋書きです。
夜な夜なお菊の亡霊が井戸から現れ、皿を数える声が屋敷内に響き渡るという恐ろしい伝説です。
しかし、実はこの怪談の元になった話が、江戸時代よりも100年以上も前に播州(現在の兵庫県姫路市)で既に存在していたのです。
この話が「播州皿屋敷」であり、舞台は姫路城です。
名前が似ているだけでなく、物語の構成も酷似していることから、江戸時代の「番町皿屋敷」は、この播州の物語を元にしているのではないかと考えられています。
「播州皿屋敷」の物語
姫路城主と家臣の謀反計画
「播州皿屋敷」の伝説が始まるのは、1504年、室町時代のことです。
当時、姫路城の城主だった小寺則職(こでらのりもと)は、まだ若くして城主となったばかりでした。
則職の家臣である青山鉄山(あおやまてつざん)は、彼を毒殺して姫路城を乗っ取ろうと企んでいました。
しかし、この計画は則職の忠臣である衣笠元信(きぬがさもとのぶ)の愛妾(あいしょう)であるお菊の通報によって未遂に終わります。
お菊は鉄山の悪事を探るため、彼に仕えるふりをして情報を集め続けました。
しかし、鉄山の家臣である町坪弾四郎(ちょうのつぼだんしろう)が彼女を怪しみます。
彼は、鉄山が大切にしていた10枚の皿のうち1枚をわざと隠し、その罪をお菊に着せました。
そして弾四郎は、お菊を自分の屋敷に連れ込み、庭の松の木に縛り付けたのです。
お菊の悲劇と怨念
お菊は、町坪弾四郎の度重なる拷問にも屈せず、彼の命令に従うことはありませんでした。
怒りに満ちた弾四郎は、ついにお菊を殺害し、その遺体を屋敷の井戸に投げ込みました。
するとその日から、夜ごとに井戸の中から「いちまい、にまい…」とお皿を数えるお菊の声が響くようになりました。
この怪異が続き、井戸は「皿屋敷」と呼ばれるようになったのです。
姫路城内に現存する「お菊井戸」
このお菊が投げ込まれたとされる井戸は、現在でも姫路城内に「お菊井戸」として残っています。
井戸は歴史的な遺跡として観光客に公開されており、怪談ファンや歴史好きには見逃せないスポットです。
一説には、この井戸が城外との秘密の連絡路として使われていたため、誰も近づけないように「お菊の幽霊が出る」といった噂を意図的に広めたとも言われていますが、真相は不明です。
伝説の背景と符号する要素
「播州皿屋敷」と「番町皿屋敷」は、時代や場所は異なるものの、多くの共通点があります。
まず、お菊という同じ名前の女性が重要な役割を果たしている点や、青山鉄山という人物が出てくること。
また、「青山」という姓が江戸の番町皿屋敷でも使われており、播磨守(はりまのかみ)という役職まで一致しています。
これらの要素から、江戸時代に有名になった番町皿屋敷の話は、姫路城にまつわる播州皿屋敷を元にしている可能性が高いと考えられています。
姫路城を訪れるなら「お菊井戸」にも注目!
もし、姫路城を訪れる機会があるなら、ぜひ「お菊井戸」にも足を運んでみてください。
この井戸は、ただの観光名所ではなく、長い歴史の中で語り継がれてきた怪談と人々の想いが詰まった場所です。
日本の城にはそれぞれ固有の伝説や歴史があり、姫路城もその例外ではありません。
お菊の怨念が残る井戸を前に、当時の物語に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
皿屋敷伝説に秘められた姫路城の魅力
「皿屋敷伝説」は、姫路城にまつわる数多くの歴史や伝説の中でも特に心を引きつける物語です。
お菊の悲しい運命と、彼女を取り巻く陰謀や怪談は、現代でも多くの人々に語り継がれています。
お菊の伝説は単なる怪談ではなく、姫路城という日本の歴史的建造物に深く結びついた物語です。
伝説を知ることで、より深く歴史や文化に触れることができ、姫路城の魅力をさらに感じられることでしょう。
姫路城に今も残る「お菊井戸」は、その伝説を感じられる場所として観光客に人気です。
伝説と歴史が織り交ざった姫路城を訪れる際は、ただ美しい建築だけでなく、このような悲劇の物語にも思いを馳せてみると、さらに深い魅力を感じることができるでしょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。